「名前を付けて保存」について

「名前を付けて保存」ということを、仕事でも家でも、パソコンを使っているとする。画像にしてもテキストにしても、コンピュータに保存するには名前を付けないと、それがなんなのかわからなくなってしまうから名前を付けるのは当然のことだと、いつの間にか思うようになった。だが、この「ファイルに名前を付ける」という行為は、たいしたことがないようでいて結構めんどくさくて、トラブルの種になりさえする。それは、「ファイルの中身と名前には何の正当な関連性は保証されない」からだ。これも当たり前のことだが、女の子の写真に「おじいさん.jpg」という名前をつけて保存することができる。もっというと、「bible.doc」という名前をつけることさえできる。「拡張子」というものも、利用者が任意に変更できる。テキストファイルに.jpgとつけたり、動画ファイルに .doc とつけることができる。それらのファイルをダブルクリックすると、「テキストではありません」というエラーが表示されたり、意味のわからない文字列が表示されたりするだろう。Windowsの場合。

iPhoneを使うようになってしばらくして、iPhoneでは「名前を付ける」という行為がほとんどないことに気づいた。ほとんどといったのは、アイコンを重ねたときに生成されるフォルダ名を変更できることが思い浮かんだからだ。だがそれ以外はiPhoneでファイルやフォルダに名前をつけた記憶がない。WEBで(safariで)、いいなと思う画像があったら、なんかのアイコンをタップして「Save image」とやると、画像は保存される。どのフォルダに、なんという名前でなどを指定する必要はない。画像を保存する場所は決まっているからだ。画像が保存されているフォルダをひらくと、サムネイルが表示される。名前はない。もちろん、拡張子なんかない。この仕組みになれると、Windowsで仕事をするのがめんどくさくなってくる。多くの会社はWindows XPとIEを使っている。Vista以降、ビジネスではMSの最新を追うことをしなくなった。一番大きな理由は「セキュリティ」なのだろうか。PCを使うことが非常におっくうになった。つまらなくなった。多少のバグやフリーズなどがあっても、新しいことがより速くかんたんにできるようになるのはおもしろかった。

しかし今は、コンピュータもネットワークも携帯端末も、重荷でしかなくなりつつある。コンピュータの導入後、かえって紙が増えたということが言われたが、それがようやくなくなって、ペーパーレス化がようやく実現できたと思ったら、また思わぬコンピューティングをはばむものの登場だ。人はそれを「コンプライアンス」と呼ぶ。